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パン

お昼ごはんにパンを食べたかった。
わたしはごはんがすきであんまりパンがすきではないけれど、「朝パン屋さん(チェーンじゃない)でパンを買って出勤する」というOLの出勤っぷりにあこがれた。QOL高そうな顔して会社にいってみたかった。
近所のパン屋さんは月曜日が定休日で、でもそんなの知らなかったから、意気揚々とでかけて撃沈したのが月曜日。
リベンジを誓ったのが水曜日。つまり今日。
 
 
そこにはベーグルだとかドライフルーツだとかくるみだとか、それはそれはナチュラルの頂点があった。
そこにいるだけでkunelだった。
パンはどれもころっとしていて、それでいてつやっとしていて、結局のところおいしそうだった。
小さな店内を見渡して、レモンピールとサワークリームがはいったパンと、カマンベールチーズとハムがサンドされた白いパンを買った。
どちらも小さくてまるくてかわいかった。
 
 
仕事をしながら、あ、今日はパン屋さんで買ったパンがあるんだと思った瞬間のときめき。
わたしは映画の主人公かなにかか、原田知代か小林聡美か。
ふんふん歌いながらブレンディをいれることはできないけれど、大丈夫、そこにはパンがある。
 
 
午後になり、同期たちとお昼ごはんを食べる。
みんな会社で買った油のまわったお弁当か、コンビニのおにぎりをたべていたけれど、わたしは違う。
なんてったって、レモンピールとサワークリームとハムとカマンベールチーズだから。
意気揚々とかじりつく。
まずはハムとカマンベールチーズの方から。
叫び出すほどではないけれど、じんわりと、しっかりとおいしかった。
 
うれしくなって、食べ進める。
おいしい。
 
おいしい。
 
 
 
ん?
 
 
違和感を覚え、よくみたら、そこにいるのはレーズンだった。
わたしの大嫌いなレーズンだった。大嫌いなレーズンが、ハムとカマンベールの奥に大量に居座っていた。
おどろいた。もう食べられない。
同期も同情してくれた。
レーズンには注意書きが必要だね、って言ってくれた。
それでも悲しみはぬぐえなかった。
 
 
きっとなにものかが忠告してくれたんだと思う。
おまえはナチュラルとパンみたいな人じゃないだろって。
もっと地に足付けて生きろって。
わたしが原田知代に似てるって主張していたのは父親だけで、母親に全力で否定された幼き日を思い出せって。
 
 
はっと目を覚ましたけれど、それでもやっぱり悲しくて、とりあえず今晩はつけ麺をたべます。