【月と六ペンス】

こんな感じなのにカフェ巡りが趣味だ。
いい感じのカフェで1人読書したり、ぼーっとしている時間は生きている感じがしてとてもいいし、なにより京都にはたくさんカフェがあるので、コレクター魂もくすぐられる。
京都に住み始めてもうすぐ丸6年。
足を運んだカフェは70をくだらないだろう。今ではもうなくなってしまったカフェも、反対にどんどんおおきくなっていったカフェもある。
 

こんなにいろいろいったのだけれど、きちんと覚えていて何回か通いたくなったり、誰かに紹介したくなったりしたカフェって実は3つしかなかったりする。
記憶力の問題かもしれない。
けれどわたしの記憶に残らなかったということなので、結論は一緒。
2年に1カフェくらいしか、とびきりのカフェには出会えない、ということだ。もちろん私の趣味において。


その2年に1度がこの間の土曜にやってきた。


文学部時代の友達がおすすめしてくれたカフェで、ずっと行きたいと思っていた。
場所は高倉二条。
高倉二条*1は高倉二条*2にあって高倉二条*3にあるのが高倉二条*4なんだなって思いながらチャリをこいだ。完全に余談だけれど、最近いろんなものが一周して結局高倉二条*5が一番おいしいのでは?って思っている。


そんな高倉二条のそばの、ビルなんだかなんだかよくわからない建物の、アパートみたいなドアを開けたらそこが「月と六ペンス」だった。
店内はカウンターのみ。
いや、店内というか室内というか、ワンルームくらいの狭い部屋の壁2辺にカウンターがついており、みんなそこに座って各々本を読んでいる。
静かなBGMが流れ、真ん中にあるキッチンのようなところで山崎まさよし似の店員さんがコーヒーをいれる音が響く。


これぞブックカフェ。
席に座り、カフェオレ550円を頼み、しばらくすると山崎まさよしが持ってきてくれた。


独特の空気に少し圧倒される。
わたしが持ってきていたのは、ちょっとオシャレなビジネス本(?)だったのだけれど、なんとなくそれを開くのはためらわれた。
目の前には(おそらく)店員さんチョイスの文庫本がならんでいた。
その中から何の気なしに『白い犬とワルツを』を手に取って読んだ。


なんだか読み始めから終わりまで、じーんとして、ちょっと泣いて疲れた。
泣いた感じでレジに行くのは嫌だったのでしばらくただただぼーっとした。
なにこれ。純度が高すぎる。


普段洋書は読まないし、そもそも“ベストセラーになった泣ける本”なんて、あまりに薄っぺらく、敬遠していた。
そんな本を素直に読み進め、素直に感動したのは、80%くらいこのカフェの世界観によるところが大きいと思う。
完全に「月と六ペンス」の雰囲気にひっぱられていた。
もはや何読んでも泣いたかもしれないし、心が洗われたかもしれない。
アラサーちゃんとか、ナンシー関とかでもいけたかもしれない。
それくらい、イノセントなカフェだった。


好き嫌いはわかれるかもしれない。
図書館にいくと「いーーっ」てなるっていう人にはおすすめしないし、そもそも2人以上でいく意味はないような気がする。
ただ、なんともいえない場所にのまれたいとき、身の回りの空気から全てを物語として楽しみたいときなどはぜひ行くといいと思う。

とてもよかったです。

*1:つけめん

*2:場所

*3:場所

*4:つけめん

*5:つけめん